年末調整について
11月になりました。今年もあと2か月、年末が近づいてきました。
年末が近づいてくると、給与所得者の年末調整の業務の準備を始めます。
令和2年の年末調整は、今までとは大きく変わっている点があります。
1.基礎控除の額が48万円に引き上げられました
令和元年までは基礎控除額が38万円でしたが、10万円引き上げられて48万円になりました。
2.給与所得控除の額が10万円引き下げられました
給与所得者については、給料の総収入金額から「給与所得控除額」という経費とみなす金額が引かれて、給与所得の金額が計算されます。この給与所得控除額が基礎控除の引き上げにともなって、引き下げとなりました。
※なお、給与収入850万円以上の人について給与所得控除額額の限度額の引き下げにより控除額が減っています。
上記の改正により、給与収入が850万円以下の給与所得者については昨年度と税額に変わりはないです。
何が変わるかというと、扶養親族の所得の判定が変わります。
配偶者や子供などの扶養親族がパート・アルバイトで給与収入を103万円以下であれば、扶養の範囲にはいる、というのは変わりありません。
※令和1年 給与収入100万円ー給与所得控除65万円=35万円<38万円・・・扶養控除の対象〇
令和2年 給与収入100万円ー給与所得控除55万円=45万円<48万円・・・扶養控除の対象〇
しかし、
配偶者や扶養親族が自営業者の場合には、所得金額が48万円以下であれば扶養の範囲に入ります!
※令和1年 事業所得45万円>38万円・・・扶養控除の対象外✖
令和2年 事業所得45万円<48万円・・・扶養控除の対象〇
3.年末調整の申告書が変わります
年末調整の際に会社へ提出する申告書の種類が増えます。
(1)扶養控除等申告書
(2)保険料控除申告書
(3)基礎控除申告書
(4)配偶者控除等申告書
(5)所得金額調整控除申告書
「基礎控除申告書」「所得金額調整控除申告書の」2つの申告書が増えました。
ただし、(3)基礎控除申告書(4)配偶者控除等申告書(5)所得金額調整控除申告書は1枚の用紙に入るので、配布されるのは合計3枚の用紙です。
書き方については、国税庁の年末調整がよくわかるページを見てもらうといいと思います。さらに年末調整の手順を説明した動画が公開されています。
4.ひとり親控除が設けられました
いままでの寡婦(夫)控除については、婚姻歴の有無や性別により適用されない者がいましたが、公平な支援のために、生計を一にする子がいる単身者の親に対しては「ひとり親控除」として35万円の控除が適用されます。様々な事情により一人で子供を育てている親に対して、ようやく、この控除ができてよかったです。
5.年末調整手続きの電子化
令和2年の年末調整以降、生命保険料控除等の控除証明書について、会社で電子データで提供できるようになりました。
ただし、保険会社ほホームぺーじから取得するか、マイナンバーカードを使ってマイナポータルから取得するという提供方法であることと、対応できる保険会社が一部に限られています。
この電子化については、まず、自分の勤務先が対応しているか、自分の加入している保険会社が対応しているか、マイナンバーカードを取得してマイナポータルを自分で閲覧できるかなどを確認することが肝心です。
<記入する場合に気を付けたいこと>
私が関与先で記入する場合にお願いしていることは以下のようなことです。
・保険料控除証明書は10月から郵便で届き始めているので、なくさないように保管しておくことを従業員に周知してください。
・扶養親族である子どもや、配偶者がアルバイト・パートで給与所得がある場合、1月~12月までの1年間にどれだけの給与収入があるか、確認してください。
ここで金額がだいたいこんなもんだろうと少ない金額を書くと、実は扶養の範囲を超えていて、扶養控除の対象にならず、来年になってから修正して税金を追加で払うことになります。
・配偶者や扶養親族の所得については「給与収入○○円所得○○円、年金収入○○円所得○○円、その他の所得○○円」などのように、何の所得なのかわかるように書いておくと問い合わせ、間違いが減ります。※税金計算上、「収入」と「所得」は違います。
・勤務先にマイナンバーの提出をしていない場合は、自分と扶養親族のマイナンバーを書いてください。
・自分または扶養親族が障がい者、特別障がい者である場合は、扶養控除申告書に「誰」が「身体障害者手帳〇級」のように記載を忘れずに。
・16歳未満の子どもがいるときは扶養控除等申告書の下方に「16歳未満の扶養親族」を記入する欄に忘れず書いてください。